Feel like making love

最近は1年に1匹、メモリアルフィッシュが釣れてしまうと満足しちゃって、そのシーズンがほとんど終わってしまったような気分になる。


それが今季はシーズン早々、3月には↑↓のようなスゴイのを釣ってしまい、

また、新しい活動を始めたこともあって、釣りに行くのは行くんだけど、そんなにガツガツとはしない日々が続いている。


もっと言うと実は、しばらくこの Angler's Lullaby も休止しようかと考えていました。いっそやめようか、とも。


知り合いからは「そんなこと気にしなくても・・・。」なんてよく言われたけど、こんなご時世に僕のようなアマチュアがわざわざ書かなくても、と思えて、なかなか気がノらなかった。


そんなある日、とある人からメールがあった。


東京の大企業に勤めていて、何度か一緒に飲んで、随分と説教してしまったこともある年下の友人。


ほんの数行の手紙には、サイトの更新をしない僕の体調を気遣うのと、一読者として~、なんて台詞が綴ってあった。


数年連絡を取っていなかった、全く釣りをしない友人からの思いがけない連絡に後押しされ、久しぶりに書いたのが、前回の↓。


そして、これを読んだその友人から来たメールが↓。

今までまあまあ長い間ブログをやってきて、色んな方たちから嬉しい言葉をいただくことがあって、それぞれとても励みになってきました。


そして今回のこのメールは特に嬉しかった。「乾いているけど、ひっかかる文章」「瑞々しい写真」なんてホント、なんてセンスのいい褒め言葉なんだろう。この人、こんな上手に言葉を使える人だったっけ?


お世辞だとしても本当にありがとう。元気が出ました。Kくん。


(後段の「130歳まで~」のくだりは丁重にお断りいたします。)



話しは変わって。


僕には、季節ごとにそれぞれ無性に聞きたくなる曲がいくつかある。


大体7月くらいになって、本格的な夏の香りがしてくると、この曲がなつかしく思えてくる。


マリーナ・ショウの、”Feel like making love"。


1975年の古いアルバムに入っている曲だが、ソウルミュージックとかR&B界隈では多分知らない人はいない位の名曲。


曲名も歌詞の内容も直球ド真ん中のラブソングだけど、そもそも世の中の大半の音楽はラブなソングばっかりなんだから僕にとってそんなことはあんまりどうでもいい。


大事なのはミュージック。


有名なミュージシャンの方々がこの曲のことを語る時、「大人の余裕が~」とか、「都会的で~」「オシャレな~」なんて表現を使うことが多いように思われる。


これらとは少し違って、僕が感じるのは一言で言うと、「郷愁(きょうしゅう)」。


昔、祖母が危篤になって見舞いに行き、長崎から宮崎に帰る車中、真夏の夕方、熊本の八代あたりの田園風景を見ながら、この曲を何度も何度もリピートして聴いた。


田舎の長閑(のどか)な風景の上に、心の奥底にある懐かしさのようなものがかぶさって、諸行無常、侘び(わび)・寂び(さび)、涼しげな悲しさ、そんな感情が絶え間なく湧き上がってきたのを覚えています。


そしてあの時の感興は今でも色褪せることなく、今年もやっぱり夏になって、この曲を聴いている。


主役はもちろんヴォーカルのマリーナなんだけど、僕はギターのデヴィッド・T・ウォーカーとラリー・カールトンの演奏が何より大好き。


(多分デヴィッドだと思うんだけど)曲中ずっと、ギターがヴォーカルとコール&レスポンスするように、つぶやいたり、うめいたり、軽く叫んだりする。


郷愁たっぷりに「キュルルル-ン」とギターが鳴くと心が同じように優しく締め付けられるような気がするし、曲の後半、転調する時のカッティングなんか、もう、最高なんです。最高。


つい先日、友人3人でキャンプ釣行をした時も頭の中はずっとこの曲でした。


珍しく晴れた空に、のんびりとした本流の透き通った水。


ガツガツしないで、のんびりと。味わうように。


まして、たまたま僕は朝一番のポイントでいきなり尺上の立派なのが釣れてくれて、


ましてそれが、アングロのHOBOミノーとカーディナル52、パラゴンの組み合わせだったから、もう十分満足。



「ホラホラ!ランディングの写真撮るから、もっとカッコつけて!」


里川のヤマメたちは程良いくらいに気難しくて、みんな釣れたり、釣れなかったりを繰り返してたけど、ワイワイ・ガヤガヤな時間はそれだけで楽しい。


午後になり、暑さが本格的になると、みんなそれぞれ、


夏の清流にダイブしたり。


釣りを終えて、温泉にゆっくりと浸かって、心身ともにスッキリしたら、宴の準備を。


始まりはよく冷えたビールにライムをねじ込んで、程良くなじんでから胃に流し込む。

朝早くから動いた胃袋にジワッとしみこんでいくのが分かる。


ふと気がつくと、今年初めてのヒグラシの鳴き声が聞こえる。


そんなこんなの1シーン1シーンが、いつかきっとセピア色の郷愁に変わるのだろう。


料理は各自持ち寄って、それぞれが作るスタイルで。


野郎の集まりにしては珍しく、仲間内はほとんどが料理上手で、いつも食べ物に困ることはない。


中でも、自身で会社を経営しているFes男(49)が提供してくれた、立派なステーキ。


アウトドアで、スキレットで、ミディアム・レアとレアで、ガーリックとスパイスをたっぷり効かせて、甘いアブラの香りとともに噛みしめる喜びといったら。


そして、口の中の残り香をライム・ビールで洗い流し、また次の一口。。。


もう、何も言うことはございませぬ。


このFes男(49)、最近は個人向けに「馬刺し」の通信販売を始めたそうです。

以前、何度か食べたことがあるのですが、元々飲食店などに卸しているクオリティでもあり、最高です。

家呑みなんかにもバッチリです。ご興味ある方は↓からどうぞ。

ただ、実は人一倍神経質で気難しい僕は、あまりキャンプが好きではない。だって暑いし、虫も多いし、灯りは暗いし、後片付けもめんどくさいし、テント(持ってないけど)とか車は寝心地が悪い。


今、巷で流行っているらしいソロキャンプなんかも何が楽しいのか全く分からない。単に釣りが好きなだけなのだ。


「釣り好き=アウトドア好き=キャンプ大好き」なんて雑な方程式は僕の中では成立しない。


大体、元々、(自分にとって無意味な)人の集まりがとにかく嫌いで、同窓会とかほぼ行ったことがない。こうやって釣りで気心の知れた連中が誘ってくれるからこそ、年に2~3回くらいは顔を出そうと思うのだ。


「友情」なんて言葉の意味もあんまり分からないし、そんなものより何かしら自分の理想を追い求める人生の方がずっと素敵だとは思う。


だけど、今回みたいにKくんのメールとか、仲間内の集まりとかで、「ふ~ん。」と思わされた時間もないわけじゃないし。


そうだなあ。


どうやら僕の人生も折り返しらしいから、少し削れて、こすれて、丸くなるのもいいかもしれない。


あまり好きなじゃないキャンプも、行けば行ったで楽しかったしな。


こんなことを考えながら聞いている”Feel like making love”は、宮崎の、真夏の、風になびく青々とした稲穂の風景にもよく似合う。



所詮、全ては仮初(かりそめ)の人生。


時折訪れる、泡沫(うたかた)の邂逅。


人の夢は、そんな刹那(せつな)の中にもあるのかもしれない。


なんてね。

Angler's lullaby

アングラーズララバイ ~ 釣り師の子守歌 〜