Departure
さみしさだけではない、きっと心の中には大きな不安がある。
「フィッシュ・オン」の中にはこの本のことが書かれている部分がいくつかあって、その中でも一際見事な描写がある。
それは開高さんがアラスカでキングサーモンを赤白ダーデブルでヒットさせるシーンの直前。
釣れないアングラーのグズグズ、ネバネバとした心の葛藤が、「釣魚大全」の作者、ウォルトンさんをモチーフに実に美しく、見事に描かれていて、まさに開高さんの真骨頂だと思う。
この「釣魚大全」が書かれた時代のイギリスは、どうやら動乱の真っただ中にあったらしくて、歴史年表を検索するとナントカ内戦とか、なんとか戦争とかが沢山出てくる。
そして、あの大疫病、ペストが流行ったのもまさにこの時代。
なんだか今と似ていると思う。
この本を書いたウォルトンさんには今の僕たちには簡単に理解できない心の波動がたくさんあったんだろうけど、とりあえずそんな時代でも釣りに行って、この本を書き上げたのかな、なんて想像してしまう。その点は僕らと一緒?
17世紀のイギリスも、21世紀の世界も人の周りに起きている不幸な出来事は大抵が人が起こしているもので、特に今起きているそれらの多くは「誰か」がわざと起こしていると信じている。
別に陰謀論者と思われても構わない。簡単なことだ。世界の裏側が分からなくても、テレビ、新聞、ネットの主流メディアと正反対のポジションから物事を感じて、色々調べればすぐに分かること。昔から「無知は罪なり」と言うではないか。
そんなこんなで、僕自身は随分前から精神的には隠遁生活を送っている。もう別に何が何でもどうでもいい。個人の力でこの現状に立ち向かうなんてのは蟷螂の斧以外の何物でもない。フニャフニャ、グズグズしながら逃げ回るしかない。
そして時折釣りにでも行って、ああでもない、こうでもないって遊ぶのだ。それで十分。
しかし、ただ一点、今の子どもたちがかわいそうでならない。
彼らの失われた青春は決してもう戻ってはこない。
僕はもう充分生きてきた。
残りの時間、数少ないお気に入りたちに囲まれて、
こんな老木のようになれればそれで満足。
昔、ここの店主に笑いながらこう言われたことがある。
あ、そうそう。
生きにくいのを生きてくってのは誰にとってもきっと大変。
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