週末は山猫
「俺、今日はもっぱらカメラマンするから、2人でバッチリ釣ってよ。」
今にも泣きだしそうな空。梅雨入り直後の南九州。
宮崎の山奥深く、フェス男とMURA、そして私の3人でワンデイ・トリップ。
久しぶりに訪れたこの川。
途中の林道は先日の大雨のせいか、それはそれはひどく荒れていた。
ところで、
釣りとは全く関係ないのだけど、最近気になってるのが漱石の「吾輩は猫である」。
まあまあ分厚い本で、なかなか読み進まないのだけど、これって実は意外と奥深い読み物だと思っている。
意外と、なんて、かの文豪にとても失礼だけど「吾輩は〜」って私の中では多分比較的気軽に読める小説みたいな位置付けだったから、久しぶりに読んでみて少し面食らっているということ。
多分40歳あたりを過ぎて、まあまあ人生のイベントを経験した後で読むと、味わいが増す本なのかもしれない。
釣りの翌週。二日連続の夜の街。季節柄、総会とかで夜の会合が多いシーズン。
早く終わった日は、ほろ酔い加減で1人フラフラ歩きながら帰るのが楽しい。
夜の散歩なんて滅多にしないから、見慣れた普段の光景が酒も手伝ってやけに新鮮に見える。
大昔、まだ電気がなかった時代、人々は夕暮れから夜になる一時を魔物が現れる時間、「逢魔時(オウマガトキ)」と言ってひどく恐れたらしい。しかし現代は夜になると街はどこもここもピカピカと人工の光にあふれる。魔物もまぶしくてそうそう出てこられないだろう。
うん。これはこれでキレイだ。
ネコになった気分で色んなところを見上げてみる。何気ない光源にうっすらとドラマが感じられる。
いくら自然が好きで、釣りが大好きだと言っても、私たちはしょせん街ネコのようなものだ。
1~2泊程度のキャンプで山中に楽しく泊まることは出来ても、それを1週間も続けると多分気が滅入ってしまうだろう。
あの美しい自然を常に妄想しながらも、やっぱり電気・ガス・水道が簡単に手に入る生活がもう当たり前になってしまっている。
夜遅くに小腹が空いたら、サンダルつっかけて小銭を持って少し歩けばすぐ食べ物が手に入るし。
そこら中、いたるところで人の作ったものに囲まれていられる。
そりゃ、つらいこともあるけれど、大自然の中で暮らすことに比べたら、安心・安全・ノンビリに違いないのだ。
しかし、週末が近づくにつれ、雄ネコたちの野生がうずいてくる。
ほんの一時でいい、普段表に出せない本能を自分たちのギアに注入し、野山を駆け巡るのだ。
さぁ!今こそ猛々(たけだけ)しい山猫になるのだ!
あの日は2匹の(中年)ネコを先行させた。
彼らの野生あふれる生き様をこの目とカメラにしっかりと納めるつもりでいた。
しかし、どうにもピリっとしない。
何よりヤマメの反応が良くなかった。これはこれで仕様がない。
ランカーが1本出れば、写真撮影なんかで午前中いっぱいはかかる区間が、ほんの3時間程度でコンプリートしてしまった。
「戻ろうか・・・。」
「そうですねぇ。」
道中、黒猫は鹿のドザエモンを写真に撮り、
もう1匹の青猫に至っては口笛で小鳥と会話をし出した。
「そうじゃニャイだろう!!」
と言いたくなる瞬間もあったが、それでも普段、街ネコのような暮らしをしている私たちにとって、運よく晴れてくれた空に照らされた美しい景色を眺めることは幸福だった。
いつか一流の週末山猫になれる日を夢見て。
また遊びましょう。
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